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No.20


田島博士の特別栄養講座

アミノ酸の本当の役割

テレビなどでもアミノ酸の効用がクローズアップされ、市場にも様々な商品が出回っています。持久力向上や脂肪分解の促進などが看板になっているようです。確かに個々のアミノ酸には少なからず生理活性はあると思います。しかし別の視点で考えてみると、アミノ酸に脂肪酸のような強い作用がないからこそ、血液中に遊離の状態で存在し得るのだと言うこともできます。従って、特定のアミノ酸の機能よりも、それが体を作るタンパク質の材料として用いられることの方が、より重要な役割だと思います。タンパク質合成能力を十分に引き出すために、バランスの取れた食事をすることと運動を欠かさないことの方が、より大事なことなのではないでしょうか。


アミノ酸の消化と吸収

腸からのアミノ酸の吸収は、絨毛のようになっている一つひとつの上皮細胞を通じて行われます。その細胞膜上にはアミノ酸を専門に運ぶ輸送体があります。複数の種類がありアミノ酸ごとに対応する輸送体は決まっていますが、必ずしも一つの輸送体が一つのアミノ酸に対応していないため、吸収時に競合が生じることになります。食事で摂取されたタンパク質は、消化の過程を経てペプチドやアミノ酸に分解されますが、腸の上皮細胞はこのペプチドの輸送体も持っているために、アミノ酸だけの場合に比べてより効率的に吸収されることになります。仮にアミノ酸輸送体での競合が起きたとしても、ペプチド輸送体がそれを補う働きをするのです。私達が上手くバランスを取れるように進化してきた証とも言えます。健常人においてはこの優れた消化活動の過程を経て、栄養素を吸収するのがベストなのです。