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No.18


Professional プロ化への波紋

イチローと佐々木が大リーグのオールスターゲームに出場し、中田は破格の移籍金でパルマと契約した。日本のプロ選手達が世界の舞台で活躍している。野球もサッカーもシステムが確立され、次々とそれに続く選手が出てきている。陸上競技においては、先日、高橋尚子選手がプロ宣言して話題となった。しかし、積水化学所属というのは変わらず、実態は理解しにくい状況にある。

  

Professional プロ化への波紋

シドニー・オリンピック金メダリストの高橋尚子が有森裕子に続いてプロの道を選んだのは何故か。様々な報道がされる中、陸上競技界におけるプロ化とはどういう意味なのか、他の実業団選手とどう違うのか、理解できない点が多い。これから競技を続けていこうとしている若い選手の為にも、社会人選手の置かれている現状を取材した。
日本陸連の説明によると「プロ」とは「スポーツを営利目的に構成された組織や団体に所属し活動する選手」と定義づけられている。例えばプロ野球において、巨人軍は野球での営利を目的としたチームであるから、そこに所属する選手はプロである。Jリーグも同様だ。現在、陸上の社会人選手はほとんどが実業団の社員で、日常勤務しながら競技を行っている。有森、高橋の両選手の場合もここに含まれるのでアマチュアとみなされる。
一方、テレビでタレント活動をしている増田明美や谷川真理はプロと判断される。彼女達はプロダクションに所属するタレントであり、営利目的で陸上競技に携わっているという訳だ。現在は陸連に選手登録していないので活動は拘束されないが、陸連傘下の競技会への出場資格はない。

ルイスもアマチュア
意外にも、世界中の陸上選手を統括しているIAAF(国際陸上競技連盟)の定める憲章で、プロ化は一切認められていない。つまり陸上のプロ選手は存在しない決まりになっているのだ。カール・ルイスも選手時代はアマチュアだった。したがって、日本で注目を集めた二人もプロ選手としての活動は規定上はあり得ない事になっている。

配慮ある改正内容
厳しい活動の現状
有森裕子の場合はリクルートAC所属として日本陸連に登録している。それゆえ、大会出場料やテレビ・CM出演、著述活動はすべて陸連の許可が必要となる。報酬もガラス張りで、有森選手の活動が厳しい現状にある事を陸連は熟知している。多大な功績を認めて肖像権やマスコミ出演料を得る事には賛成だが、マラソン選手の選手寿命、マスコミでの商品価値を考えるとピークは二〜三年が限度、企業を辞めてプロとして成り立つかどうかは疑問だと言っている。たとえ出演料などが入らなくなっても、企業に所属したままなら選手生命が断たれる事はない。

表面化する肖像権
高橋尚子選手がプロ宣言をした理由の一つは肖像権の獲得である。
・肖像権とは、個人の肖像画や肖像写真を、無断で描かれたり撮影されたり、また、公表されることを拒否できる権利だ。つまり選手がプロとして肖像権を主張すれば、CMや講演などで収入が得られる事になる。現在、アマチュア選手の肖像権はJOCが管理している。オリンピック出場選手の肖像権を企業に販売するためだ。「がんばれ!ニッポン!」の始まりである。もちろん協賛金は各競技団体へ強化資金として分配され競技生活が向上するはずだが、そのメリットは選手までは届かない実状だ。企業にとって宣伝媒体のスポーツ選手は、社会的な保証、給与、練習環境を提供されている。もし選手が肖像権を主張すれば、企業イメージが悪化する可能性がある。JOC、企業、選手、この三つのバランスを保たなければ、問題解決にはならない。高橋選手の動きは各方面で考え方を見直す良い機会となっている。いずれにしても、肖像権を主張するならば、権利を行使する側、すなわち選手自身の資質が問われるのは必至である。(伊)

特例を認めた規約改正
先の陸連理事会でオリンピックや世界選手権で活躍したメダリスト級の選手に限っては特例を認めようという動きがあり、規約の一部が改正された。今まで、著述やテレビ・CM出演等による報酬を受け取る事は一切禁じられていたが、 陸連がその功績を認めた場合に限って許される事になった。ただし規約には、所属チームの責任者の同意が必要である、と明記されている。あくまでも身分は企業等に所属しているアマチュアである事を前提にしている。

社会的なシステム整備が先決
IAAF憲章を尊重する義務があるのならば、プロ化はあり得ないというのが結論だ。海外の陸上選手はクラブチームに所属しているか、個人で賞金を稼ぎ、コーチを雇って競技をしている。企業とスポンサー契約を結ぶ場合もある。日本では企業所属が主流で、そこから外れると競技がしづらい。また、世界のトップで活躍した選手が必ずしも社会人として成功していない。未だ陸上競技を支える環境が未成熟だからと言えるだろう。(山)

ラグビーのプロ化
〜村田亙選手に聞く〜
村田亙(むらた・わたる)
スクラムハーフ 福岡県出身 三三歳東芝府中を経てフランスのアビロン・バイヨンヌへ移籍。


・ラグビー界にもプロ化の波が押し寄せている。七月に行われたパシフィックリム大会において、フランスプロリーグで活躍していた村田亙選手が日本代表として出場した。準決勝の行われた東京スタジアムでのインタビュー。

・チームには上手く溶け込めましたか?
「勝敗に関係なく報酬を保証されていたのは、僕を含めた二名だけなんです。そういう意味では、当然周囲から厳しい目で見られました」 
・他の選手の報酬は?
「彼等はインセンティブ(勝利給)だから勝たなければ収入が無いんですよ」
・日本選手との違いは?
「自己管理能力が違います」
・村田選手の言葉から、プロに求められているのはあくまで結果であるということが分かる。勝つ事が先決、そうしなければ報酬もない。その為の厳しい自己管理は当然のことなのだ。このように日本の選手がプロチームに飛び込んで、その強靱な肉体と精神を学ぶ事が、国際レベルに近づく第一歩となる。