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No.17


田島博士の特別栄養講座

創意工夫?  絹糸

創意工夫?

研究には迅速性が求められます。人よりも先んじて発見、開発をする事に価値があり、効率が重んじられるようになります。お金を払えば便利な物がすべて揃い、自らは何もしなくても、試料の作製から実験まで代行するサービスもあります。特に遺伝子を扱った研究では利権が絡む為、年間数億円を消費しながら進められています。全てがそうとは限りませんが、創意工夫をして物を作り、研究を進める姿勢が少なくなったのは確かです。ガラス細工のイロハから覚え、不要の機械から使える物を再利用し、人力で補いながら観察する事の大切さを覚えてきました。これからの研究は巨額を投じて行われるプロジェクトと、小さな研究室単位の二極化に進むでしょう。ただ、人を育てる意味においては、機械やキットの力で大きな成果を挙げるよりも、ローテクを駆使して創意工夫する方が最終的に大成するのではないでしょうか。

絹糸

蚕から生み出される絹糸。昆虫が作る糸の特徴は、タンパク質だけで出来ている事です。絹糸線という器官でフィブロインというタンパク質が合成され、それにセリシンというタンパク質がコートされて糸になります。フィブロインには、栄養学的に非必須で、昆虫体内で合成できるアミノ酸が多く含まれています。織物に使われることで分かるように、フィブロインは非常に固いタンパク質で消化が良くありません。食物繊維と同じように、小腸で胆汁酸と結合してコレステロールを低下させるという、作用がある事が確認されています。また、吸収しやすいように加水分解した物には、インシュリン分泌を促進する作用もあるようです。絹タンパク質が健康補助食品になり得ると言うつもりはありませんが、意外な素材に意外な効果がある事に驚かされます。研究する立場の者は、分野にとらわれずに、幅広い興味を持つべきだと思います。