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No.15


田島博士の特別栄養講座

DHAの効用(脳機能に関して)

DHA(ドコサヘキサエン酸)は神経細胞の構成成分で、母乳にも高濃度で含まれている事から、脳の発達には不可欠だと考えられています。乳幼児用の粉ミルクにDHAを強化した商品が多く見られるのもこの為です。数多くの疫学調査や動物実験の研究からも、DHAは記憶学習機能の維持向上、精神安定化、さらに視覚機能の維持向上に作用する事が証明されています。人が人らしく生きて行く上で、最も大切な栄養素の一つであると言っても過言ではありません。DHAは人体の中での合成量が少ない為に、食事から摂取する必要があります。経口からの摂取量が低下すると、脳を中心とした神経系にとって大切な構成成分の減少となり、その機能の変化や行動へも影響を及ぼすと考えられています。これは成長期の子供だけでなく、大人も同様です。最近の「落ち着きのない子供達」の原因が、魚離れによるDHAの不足であると断定は出来ません。しかし原因の一つではないかと考える研究者もいます。DHAは脳の正常な発達と維持に、密接な関係がある事を覚えておいて下さい。

必須と非必須

如何に不足している物を補うか、栄養学はこの事を中心に発達してきました。その為に、不足すると成長に影響が出る栄養素を必須(不可欠)、そうでない物は非必須(可欠)という表現をするのが一般的です。この区分けは慢性的な栄養不良の場合には妥当かもしれませんが、現在のように飽食の時代には、かえって間違った認識を生むのではないかと思います。アミノ酸を例にあげると、体内で合成出来ない八種類を必須、そうでない物を非必須と明確に分けています。必須という言葉は、それだけが必要かつ重要であるような印象を与えます。しかし実際には、必須も非必須アミノ酸も健康な体を維持するためには必要であり、重要度に差はないのです。動物は進化の過程で必須アミノ酸を体内で合成する力を失いましたが、それは食事として外から摂取する方が効率が良い為であり、体の中で常に合成され続ける非必須アミノ酸の方が、むしろ必要性が高いと言う逆説的な考えも出来ます。商品のコマーシャルは過度に「体に良い」「必須である」事を強調しますが、体の中にある成分は、量の多少に関わらず全て必要不可欠な物だと考えて欲しいと思います。