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No.12


論走
馬酔木賢者

何の為に走るのか。楽しいからか、それとも勝ちたいからか。走る事に疲れ、逃げ出したくなった時に考える事はあっても、普段から考えているランナーがどれくらいいるだろう。スポーツは文化。人を感動させる力がそこにあるからだ。勝利を目指すプロセスは人を育て、人に感動を与えてくれる。ファンが選手の一挙手一投足に注目するのは、そうした勇気を少しでも分け与えて欲しいのだ。喜びと感動を出来るだけ身近で感じたいから、沿道の応援に立ち、競技場へと足を運ぶ。

ところが競技者の多くは、何の為に、という動機に乏しく、プロの選手でさえスポーツの意義を理解してはいない。自己に目が向いてばかりでは、社会的視野など無いも同然だ。走る事はどんな人でも理解出来る、素晴らしいパフォーマンスである。そしてひたむきな姿に人は無条件で感動する。エリートランナーの皆さんこそ、その天命に気付くべきである。家族でも、チームメイトでも良い。ひいては大勢の人を感動を与えられたら、その先の生き方がきっと見えてくる。大きなビジョンを持って、充実した競技生活を送って欲しい。そして、社会に影響を及ぼす様な、夢のランナーが登場する事を心待ちにしている。