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No.10


論走
馬酔木賢者

人の体にはいつも余分な栄養が備わっている。特に子供や女性の場合、成長や出産の為の大切な備蓄である。それを支える原料や触媒やエネルギー源が必要になるからだ。自転車操業では十分な発育は望めないし、粘土細工の粘土が不足したら思う様な作品が出来上がらない。しかし見方を変えると、余分を削ぎ落とせば動きが軽くなる、とも言える。そこで運動選手や監督達は、痩せれば走れるという錯覚に陥っていく。身を削って記録を伸ばしたところで、消耗し切った体はいずれ使い物にならなくなってしまう。ジュニアの大会が増え、オフシーズンが無くなってしまった今の状況は深刻である。ましてや外で遊ぶ事を知らない子供達が片寄った種目ばかりに時間を費やす事の危険性を大人は知っているのだろうか。スポーツの低年齢化で、記録は向上しているものの、競技生活が短命に終っている事実は将来を暗示している。競技の為とはいえ、子供の身を削る大人のエゴを許してはならない。