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No.10


Column & Objection

恐ろしい抵抗力の低下
今こそ、自らの抵抗力を取り戻し、鍛える事が急務

ウイルスや細菌による感染症が急増している。インフルエンザ、O−157、結核、MRSAなどの昔馴染みからエイズ、エボラといった比較的新顔まで、数え上げると切りがない。人類史上の偉業とされるペニシリン(抗生物質)の発見以来、多くの感染症に対する治療は目覚ましい発展をして来た。それに対抗する様に、ウイルスや細菌も生き残りを賭けて進化し続けている。しかし、それを抑える為に薬剤に頼ってしまう人間は自らの抵抗力を失いつつある。アレルギーの増加は当然の結果かもしれない。今こそ、自らの抵抗力を取り戻し、鍛える事が急務ではないだろうか。その為にはまず、食生活の根本的な見直しが必要不可欠なことは言うまでもない。

ルールより大切なモラル
体重測定を毎日行い、数百グラムでも増えたら試合に出さない新体操クラブ。いくらスポーツ栄養の話をしても、小中学生は食べない方を選んでしまう。食事の代わりに隠れて口にするお菓子とジュースだけが、痛々しく痩せ細った彼女達の栄養源だ。明らかに栄養失調である。スポーツにはルールがある。競技上の規定や、選手の身体機能を守るドーピングの禁止などもある。しかしスポーツマンのモラルはルール以外のところで問われている。大切な成長期に、貧血、骨密度の低下、低血圧などの問題を抱えている選手は多い。競技力アップを急ぐあまり、人間として大切な機能まで低下させてしまうのだ。これは指導者に責任がある。ルール違反では無いが、指導者も選手もこんな事をしてはいけない。正しい知識と倫理がスポーツマンシップの条件ならば、善悪の区別はつくはずである。
伊藤

テレビ中継のレベルアップ
ここ数年、マラソン・駅伝ブームに乗り、シーズン中は毎日曜にテレビ中継されるほどになった。人気が出て来た事は喜ばしいが、実況中継する側の姿勢には問題がありすぎる。感傷的なイメージソング、必要以上に騒々しいアナウンサー、感動を煽りたて、涙を強要する態度にはうんざりする。肝心のレース展開においては、画面に登場し名前を言ってもらえるのは、数人の有力選手だけで、それも先頭集団に固執している。無名でも注目に値する選手、上り調子の若手選手等、もっと幅広く取材し、紹介すべきだ。視聴者が知らない情報を提供するのが役目であるにも関わらず、解説側の無知も大変気になる。選手名はもちろん、有り得ない様なスプリットタイムを平気で口にしたり、距離に関しても目測を誤っている。必要最小限の解説で、視聴者が落ち着いてレースを楽しめる放送を切に願う。

オーストラリアの赤い鼻
誰もが春を待ち望む頃になるとオーストラリアでは町中の車が赤い鼻を付けて走り回る。小型のヘルメットに似たプラスチック製の丸い鼻が、無機質な車にユーモラスな表情を与える。可笑しいやら可愛らしいやら見る者の心が和む。乳幼児突然死症候群。何の兆候も無く子供達が寝ている間に息を引き取ってしまう奇病がある事を御存じだろうか。我が国でも毎年大勢の子供が犠牲になっている。未だにその原因が解明されない為、欧米諸国では一日も早く原因を突き止めようとキャンペーンを進めている。赤い鼻はその活動に協力しているシンボルなのだ。活動が功を奏して、うつ伏せ寝との因果関係が統計的に証明され、死者はそれまでの半分以下に減っている。驚くのは庶民の関心の高さと行動力。子供への愛情が社会を支えているのだ。一方、日本では病気の存在すら知られていない。対策も遅れをとり、症例が後を絶たない。頭の形や成長に良いなどという断片的な知識だけで、うつ伏せ寝が流行さえしている。大人のエゴが何の罪もない乳幼児の命を奪ってしまう危険性をまず知るべきだ。確かに未熟児の発育療法としてのうつ伏せ寝は効果が認められているが、徹底した管理体制が必要であり、素人療法は危険を伴う。時代を担う子供達を守るのは大人の義務である。少年犯罪が急増し、子供達が病んでいる事を嘆く前に、私達大人が正しい知識を身に付け、より良い環境を整える義務と責任を負っている事を忘れてはならない。病んでいるのは大人だとしたら、決して子供を救う事は出来ない。
山根