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No.05


駅伝を考える

関東中学校駅伝にみる!!未来のリーダー
駅伝の良さは、本来個人の競技である陸上がチームスポーツになるところにある。 タスキにそれぞれの想いを託しゴールを目指す。 悲しみ、悔しさは共有でき、喜びは倍増する。その楽しさに目覚めた人達も多いに違いない。そして、走ること以外にも得るものがたくさんある。運動部が年々減少し、汗を流したこともないような学生が増え、心と体のバランスは崩れている。そんな中、真のスポーツ精神で、将来のトップアスリートを育てようという中学校がある。中学生はすべてにおいて未開発である。中学駅伝関東大会に出場した先生方に特徴あるチームカラーを紹介していただいた。競技力にとらわれることなく、長い目で選手を育成し、成功している。これからの日本を支えるスポーツマインドを持った人材が育つことを願っている。

 心のゆとり 神奈川県東野中学校 吉田先生      理想の追求 神奈川県田浦中学校 大場先生

 地道な指導 茨城県大久保中学校 北澤先生、川和先生 陸上部不在のチーム 栃木県市貝中学校 尾嶋先生

 自主性を育てる 千葉県小見川中学校 有田先生    夢を追いかけて 南流山中学校 高橋先生

 チームワークを大切に 埼玉県新栄中学校 花岡先生  自立したアスリートを 山梨県櫛形中学校 樋先生

心のゆとり 神奈川県東野中学校 吉田先生
一昨年、600〜800mのインターバルトレーニングが多過ぎ、貧血を引き起こしてしまった。それ以来、指導の内容も大きく変わり、ゆっくりしたペース走を中心に、明日もがんばるぞ、と意欲が持続するような、ゆとりある練習を心掛けてきた。その成果は地区大会より県大会、関東大会の成績アップに表れている。栄養面も重要と考え、セミナーを利用したり、食事についても頻繁に指導している。生徒の意識も徐々に変わり、週一回提出するノートには、食事について気を付けた点や工夫、失敗などを書いてくることが多くなった。それを部活通信に載せ、生徒同士でも関心を持つよう工夫している。

理想の追求 神奈川県田浦中学校 大場先生
「楽しんで走ろう」陸上が大好きな生徒ばかりだ。チームのために何をしたら良いのか、いつも考えている。先生は他競技の経験や市内外の先生方との交流も豊富で、ひとりひとりの心や身体の状態を見極める細やかな心遣いがある。保護者会では栄養セミナーを開き、日常生活の大切さ、家庭での理解と協力の必要を訴えてきた。末長く陸上を続ける選手を育てようと、地道な指導を続けてきた。昨年、数秒差で涙を呑んだ悔しさがタスキに込められ、今年は努力が実を結んだ。

地道な指導 茨城県大久保中学校 北澤先生、川和先生
「個人の目標達成」がチーム力を上げてきた。記録を伸ばす過程で、大切なものを見つけて欲しいと願う。自己管理できる選手の育成を目指し、トレーニングだけでなく、食事についても考えるようになった。全国出場は、そうした地道な活動に裏付けられている。今年は栄養セミナーのほか陸連トレーナーを招いてテーピングの勉強会も開いた。先生方の情熱に生徒も応えてくれるであろう。

陸上部不在のチーム 栃木県市貝中学校 尾嶋先生
男女とも全国大会出場の強豪チーム。実は陸上部がないため、選手は男子が野球部、女子はバスケット部が中心、チームづくりは9月から始まる。所属部に配慮し、練習も限られた時間で集中的に行っている。指導するのはバスケット部の尾嶋先生。「陸上は専門ではないので試行錯誤の連続です」豊かな自然環境と地域の方々の協力もあり、他の競技とのメリハリのある練習がうまくいっている。長距離は辛いと進学するとやめてしまう選手が多いが、全員高校で陸上部を希望しているのが心強い。

自主性を育てる 千葉県小見川中学校 有田先生
「やらされる2時間より、やる30分」自主性を育てることを主眼に置いている。様々な練習法を理解させ、その中から生徒が日々のメニューを決めていく。重要なのは充実感の持てる練習をすること。足りないと思ったら朝や休日に練習をすることもある。進んで練習できる生徒の日誌をクラブ通信に載せ、部員の意識も高まっている。

夢を追いかけて 南流山中学校 高橋先生
「寄せ集めのチームでのスタートでした。5年前、うちの生徒にも出来ると思い、父兄や職員に理解を求め、一丸となって環境作りから始めました」今では、駅伝や陸上に憧れて部員が集まるようになった。陸上部員だけでチームを構成するのは、当り前のようで難しい。全国を目指すとなると大変だ。みんなで誰にも負けない大きな夢を持ち続けてきた。それを見守る環境があるから、無理せず実力を発揮できるに違いない。卒業生の活躍も大きな励みになっている。先生の情熱は生徒に夢を与えてくれたようだ。

チームワークを大切に 埼玉県新栄中学校 花岡先生
駅伝、リレー、総合得点を目標にし、チームのため、仲間のために力を結集する。風邪をひいたり故障をしても、チームワークを乱さない努力をする。付き添い役の生徒も役割の必要性を自覚する。そうして日常生活から競技者として意識を高く持つ。仲間意識が総合力につながれば、全員参加で栄光を勝ち取るのも夢ではないはずだ。

自立したアスリートを 山梨県櫛形中学校 樋先生
自立したアスリートの育成を目指し、栄養やトレーニングのことをきっちりと理解させてきた。肝心なのは生徒の自主性を引き出すこと。「先生が見ていないところでも真面目に取り組む」ことが当り前になり、チームは想像を越えて強くなった。一昨年、山梨全日中に向けての強化練習で得た貴重な経験を指導に活かしている。教えたいことが一杯ある、と言う先生のまなざしは真直ぐに生徒達を見つめていた。

駅伝への警鐘
広島で行われた都道府県対抗男子駅伝を最後に今年度の主要大会は幕を閉じました。選手の皆さん、そして地域陸協の皆さん本当にお疲れさまでした。日本発祥の駅伝。タスキに託された想いは想像を遥かに超えて大きく、未知の可能性を引き出してくれたこともあったでしょう。そこには数々のドラマが生まれ、人気も高まるばかりです。しかし昨年、箱根で起きたあの悲劇は決して美談では済まされないということを、改めて考えて欲しいのです。選手の気持ちとはまったく関係のないところで地域社会や企業、マスコミの思惑に翻弄されていることが少なくありません。タスキの重さはひとりの選手をつぶしてしまうことだってあるのです。過密スケジュール、選手選考、肥大した大会運営、役員審判の体制等、まだまだ問題が多く、その歪みが選手を蝕んでいることは誰よりも参加している皆さんが実感しているはずです。駅伝の特色を活かしたチームづくり、大会運営が今望まれています。それには先ず、選手の皆さんが自ら考え、提言することが大切です。来シーズンに向けて 駅伝を考えることからリスタート