専修大学松戸高校陸上競技部
止めないといつまでも走っていた!
“野球バカ”という言葉があった。野球、野球に明け暮れて、他に何もできないことの言い訳だった。実際には他に何もすることのなかった世代を象徴しているように思う。
今やスポーツも科学の時代といわれて久しい。運動生理、栄養をはじめさまざまな分野に科学のメスが入り、データを分析する能力も要求されるようになってきた。
これからのアスリートは“文武両道”でなければいずれ取り残されてしまうだろう。しかし、どの学校でも目にするこの理想を実現できるチームは残念ながらまだ少ない。
驚くことに長距離を本格始動してから10年目のチームに今、その実現の期待がかかっている。
「個人を大切にし、明るくそして自分に厳しく」というチームのカラーは、自らもトレーニングを欠かさない林先生の人柄が反映されている。不惑をとっくに過ぎているにもかかわらず、インターハイ選手よりも遠くにハンマーを投げている姿がとても印象的だ。“自らを律すること”。選手たちは先生の姿を見て、この理想をチームの中で熟成してきたに違いない。
1、2年生の時に1区の大役を果たし、結果を出している庄司キャプテン、それに高橋君、2年生の時に区間賞をとっている山田君の3年生がチームを引っぱる。
「誰よりも早くグランドに立ち、止めないといつまでも走っていた」と先生が言うほど、自ら走りこんできた。「自分のできることをしっかりやり、自分を超える走りをすれば、チャンスはある」と口にする彼らは今、先輩たちの果たせなかった夢の重さを誰よりも感じている。どこまでやっても尽きることのない不安を抱くようになり、ライバルの底知れぬ強さが見えてきた。真の挑戦者として成長してきた者が味わう緊張がチームに満ちている。
早稲田で活躍した後宮君をはじめ、中大トップを目指す小林君、小嶋君、東海大の吉田君等々、先輩たちは皆、高校で果たせなかった夢を追って大学で頑張っている。
今や県内屈指の進学校でもあり、付属高とはいえ他大学を受験する選手も多いなか、駅伝へ傾ける情熱は並大抵のものではない。青春を陸上に、そして勉強に費やし、悩み苦しんだ彼らこそ、真のアスリートになる可能性を秘めた逸材であると信じている。駅伝の結果より一人ひとりの10年後の成長が楽しみなチームだ。
上磯ジュニアクラブ
メダリストが出たら同窓会をやりたい
英国のオックスフォード英英辞典によると“CLUB”とは「共通の興味を持った仲間が集い合うこと。」と記されている。ここでも明らかなように、学校の課外活動とか企業経営のクラブが一般的な日本の概念とは基本的に異なっている。価値観を共有し合える場や仲間を創造することに、お金も時間も労力も費やし、夢を膨らませることが本来の姿であることを知って欲しい。ふとした疑問からこの“CLUB”活動を考えるようになった北海道上磯ジュニアクラブ代表の鈴木洋さんは、いち早く学校や世代の壁を越えた陸上仲間づくりに取り組んできた。大会への参加が制約されるなど、まだまだ社会的に認知されにくい現状がありながら、陸上の本当の楽しさを伝えるために努力を惜しまない。その情熱はとどまるところを知らず、子供たちに一流選手の走りを見せたいとの気持ちから、毎年千葉で行われる国際クロスカントリー大会に遠路はるばる参加されているほどだ。私たちセリアスタッフとのお付き合いもこの大会が縁となった。
現在の登録者数は、大学生3名、高校生3名、中学生9名、3年以上の小学生22名。スタッフはコーチ2名のほか育成会長、苦情引受け専門代表責任者など。近郊1市4町、14の違う学校の子供たちが一堂に会して楽しんでいる。
当初は、「競技会に参加したいが学内では相手にされなかったり、陸上部に入っていないから出場できない。」子供たちの集まりで、小学生5名、中学生1名、コーチ1名から出発。学校の部活動では実現できない、長いスタンスで個人の適性を見極めることや、長所を伸ばす指導に務めているようだ。活動の拠点は上磯町運動公園。中学生以上は陸上競技中心のトレーニングで、各自のスケジュールに合わせて行い、小学生は、週3回が原則。90分の中でどれだけ楽しめるかを競い合う。「将来、どんなスポーツにでも適応できるように、そして何より陸上競技が好きになること。」をモットーに、中学・高校・大学へ進んでも「走りたい、跳びたい、投げたい」という気持ちを持てるように選手を育てている。「全員で使用後のトラック整備をしています。今では、荒れたトラックでは自分のストライドや足の接地の仕方がチェックできないことを知っていますから。」公認の400mトラックをはじめ、ほとんどの運動施設が整っている環境にあって、常に感謝の気持ちを忘れない。「いつか子供たちの中から、オリンピックの金メダリストが出たら全員で同窓会をやりたいものです。このときは全員が同じ同窓生として参加し、決してメダリストだけが主役でなくてもよいのです。」“陸上に夢”を感じさせてくれる上磯JCの在り方がセリアユーザーの皆さんにも参考になればと願って止まない。
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