身体の自然な呼びかけに応える食
這い這いしたての赤ん坊は、何でも口に入れてしまいます。これは、自分で食物を得ようとする本能なのです。原始の時代で考えてみると、赤ん坊が捕えられるのは、草の実や動きの遅い虫の幼虫などでしょう。少年期になると、セミ、トンボ、バッタ、カエル、メダカ、ヘビなど、飛んだり跳ねたりする小生物を日がな一日追いかけます。この時期は、骨や肉になる食物が最も必要です。捕まえた昆虫や小魚を丸ごとかじっていたかもしれません。当然、木の上の果実や野菜も摂取しているはずです。そして青年期。筋肉も発達し、ウサギ、子鹿などの小動物をねじ伏せる様になり、肉食も必要となってきます。さらに壮年期になれば、気の荒い獣や、海で大型魚を捕獲出来る様になります。体力と知力が備わって初めて、大動物の肉を食する権利が得られます。やがて体力が衰えてくると、楽に手に入る野菜や貝、卵、自然に落下する完熟果実などがふさわしい食物となってきます。原初の食事状況を想定した大雑把な区分ですが、栄養学的にみてもほぼ適正だと言えます。現代における食の選択は野放図です。こうした自然への逆行が、子供の生活習慣病や、大人の糖尿病、痛風などを引き起こしています。またヘルシーブーム、和食・粗食ブームで、定食屋が若者にもてはやされていますが、「ひじき、きんぴらゴボウ、切り干し大根、ごはん」でも、バランスのとれた食事とは言えません。通り一遍の菜食、肉食主義に分かれることなく、日本人の肉体に合った食生活、さらに踏み込んで、動物としての人間の身体の自然な呼びかけに応える食でありたいものです。(大)
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