Seria Net
No.15


日本食のすすめ(11)
肉食は是か非か

植物性タンパクのほとんどは不完全、
数種類を食べ合わせるか、少量の動物性タンパクを加える事で完全になる・・・

昔の日本のボクサーは苦しい減量をして計量をパスすると、精力をつける為にステーキなどの肉類を大量に食べました。瀬古選手を育てた中村監督もお金が入れば、選手にせっせと肉料理をふるまい「とにかく肉を食べていれば勝つ」という牛肉信奉者でした。しかし実際は、余分に摂取されたタンパク質はそのままでは体内に貯蔵できません。肝臓で分解されて、窒素などは腎臓を介して排泄され、残りは脂肪分として貯蔵されます。この時、二つの臓器には大きな負担がかかってしまいます。試合前のボクサーやランナーは、精力がつくどころか、逆に身体を弱らせていたのです。さすがに現在では専門的な栄養学によって正しい調整法が確立していますが、一般人はどうでしょうか。

肉食一筋のアメリカ人は世界で最も金のかかった尿を排泄していると言われ、経済的に合えば、毎日何トンもの窒素を取り出す事ができるだろうとまで揶揄されています。日本の場合、肉類、乳製品が多量に入ったおかげで、体位向上、寿命の延びなどが実現したと言われますが、それは経済的にも恵まれて、全体的に食生活が向上し、保健衛生面も改善されるなど、肉類のみの影響ではありません。飽食の時代を過ぎ、次に健康食時代、ベジタリアンやダイエットなど、今日では肉類を極端に避ける傾向にあります。

しかし、タンパク質は身体の中に貯蔵しておく事ができないので、毎日供給する必要があります。植物性タンパクのほとんどは不完全ですので、二種類または三種類を食べ合わせるか、少量の動物性タンパクを加える事で完全になります。それぞれの必須アミノ酸組成の欠陥を補う為には、穀類の三分の一を豆類にするのが一番です。これが定着すると、動物性のタンパク質より植物性タンパク質主体の食事に変わっていきます。単に肉類を削り、日本食本来の組み立ても崩れた現代の日本の食事は、飽食から貧食に姿を変えつつあるのではないでしょうか。身体が資本なのはスポーツ選手だけではありません。正しい知識に支えられた食生活で、身体をケアしてあげてください。(則)