Seria Net
No.13


田島博士の特別栄養講座

DHAの効用(脂質代謝に関連して)

DHA(ドコサヘキサエン酸)は血清脂質を低下させる効果を持っています。栄養の過剰摂取による高脂血症は、DHAを摂取する事で改善すると考えられます。ではその作用機序を考えてみましょう。魚油に多く含まれているDHAやEPA(エイコサペンタエン酸)はn-3系と呼ばれる高度不飽和脂肪酸に属します。他にはエゴマ油に多く含まれるαーリノレン酸があり、効果は同様でもその作用機序は異なります。これらの脂肪酸は、肝臓中のβ酸化系の酵素活性を増加させ脂肪の燃焼を高めることで、血液中の脂質、主として中性脂肪の濃度を低下させます。DHAとEPAは主としてペルオキシソームのβ酸化、αーリノレン酸はミトコンドリアのβ酸化を高め、脂質代謝に関連する遺伝子レベルの研究でも確認されています。おそらく、DHAとαーリノレン酸との相乗効果も期待できるでしょう。魚もゴマも日常の食卓には欠かせない食品です。脂肪の取りすぎに注意すると同時に、これらの食べ合わせにも気を配ると良いと思います。もし、日常の健康診断で血中脂質が高かった場合には、強い脂質低下効果を持つDHAやEPAの摂取がより効果的でしょう。

抗生物質耐性菌

畜産分野で用いられる抗生物質は人間の生活にも密接な関係があります。VRE(バンコマイシン耐性腸球菌)が輸入食肉で発見された事が新聞に掲載されました。MRSA(メチシリン耐性ブドウ球菌)の特効薬がバンコマイシンだけに、医療関係者にとっては大問題です。なぜ食肉からVREが見つかったのでしょうか。日本では抗生物質の家畜への投与は規制されていますが、疾病の予防や治療などの為に、今では当たり前のように飼料に混ぜて投与されています。利用される薬は、品名や若干の成分は異なりますが、人間に用いられる物と大差はありません。それを長期間多量に用いると、人間と同じように耐性菌が家畜の中で生じます。それが人にも感染する場合があるのです。食肉に直接付着している細菌は、加熱処理で無毒化出来ますが、一度環境に出てしまうと非常に厄介な事になります。家畜の糞尿などに紛れて河川や土壌に広まってしまった場合、効果的な対策がないのが現状です。耐性菌は病院などの限定された場所だけでなく、より身近な問題になりつつあるのです。健康は自分自身の手で守らなければならない時代です。正しい知識と情報を常に身に付ける事が必要です。