クローン化技術のもたらす物
クローン羊のドリーがロスリン研究所で誕生して以来、それに関する様々な記事が紙面を賑わす様になりました。今までのクローン動物は、受精卵分割を基本として行われていたのに対し、ドリーは難しいとされていた体細胞の核移植によって誕生した事から、その技術が脚光を浴びたのです。確かにこの成功は、技術的には素晴らしい事ですが、この手法を応用する事には個人的に反対です。
問題は、体細胞の核からでも動物を誕生させる事が可能になった点です。生殖は卵子と精子が受精して初めて可能になります。この生殖細胞中の遺伝子の操作は、ヒトに関しては全く許されていないのです。よく言われる遺伝子治療は体細胞に対するもので、生殖細胞には影響がないために、決して次世代には影響を残さないと考えられています。生殖細胞のみが後生へ遺伝情報を伝える事が出来るからです。体細胞クローン技術の確立により、基本的に生物が両性(雌雄)である必要はなくなったとも考えられます。そして、遺伝子操作を施された体細胞を用いて、体細胞クローン動物を作り出す事が可能になれば、獲得形質は遺伝しないと言う不文律は崩れ去ってしまいます。もちろんこれらの技術がヒトに応用される事はないと信じますが、たとえ家畜でさえ、人為的に操作を施す事は好ましくありません。
ドリー誕生の後、いち早く牛の体細胞クローンに成功したのは日本でした。以来続々と作出の報告がなされていますが、これ程多くのクローン動物が誕生しているのは日本だけです。時流に乗りやすい体質、経済ばかりを重視する日本の特徴を良く表している現象です。自然との調和を図りながら、より広い視点で基礎的な研究を積み重ねて行く方が、より大切だと思うのですが・・・。
DHAの効用(プロローグ)
DHA(ドコサヘキサエン酸)も今ではすっかりおなじみの言葉となりました。数年前までは考えられない事です。魚の油に含まれている事も、人の体にとって大切な事も、様々な情報が巷に溢れています。気の利いた健康食品や赤ちゃん用の粉ミルクには、必ずといって良い程入っています。そこで、もう少し詳しくその効果について考えたいと思います。
DHAを含む魚油の大切さが認識されたのは、欧米人とエスキモーとの生活習慣病にかかる率の差が発端でした。海産物を中心としたエスキモーの食生活から、魚に含まれる油、特に高度不飽和脂肪酸の生理活性が注目を集めたのです。水産物の摂取が脳の発達には不可欠であるという論文や、日本の食習慣と平均学力の高さを指摘する発表もなされ、魚油、特にDHAが一躍脚光を浴びるようになりました。脂質に含まれる脂肪酸の一つで、その生理作用は多岐に亙り、植物油に多く含まれているリノール酸やリノレン酸よりもはるかに重要です。
それは、高脂血症や高コレステロールの低下作用などの脂質代謝関連を始め、アレルギー症状や、脳の発達と高次機能の維持に至るまで、現代病といわれる総ての症状に、何らかの効果を示しています。次回からは個々の生理作用について分かりやすく解説していきたいと思います。
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