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No.10


日本食のすすめ

和食は粗食か
日本食が庶民の手の届かぬ高級料理に

仏家の食事はいたって質素。肉類は使わず、野菜中心の精進料理で、ご飯と香の物、味噌汁といった一汁一菜が基本です。修行によっては朝昼だけの二食です。この食生活で座禅の他に、農作業等の作務を毎日こなします。多くの青年僧は脚気に悩まされ、修行の身には当たり前とされていました。しかし最近は健康に関する情報も多く、彼らは僅かな自由時間にコンビニに行っては牛乳やビタミン、カルシウムなどのサプリメントを買って栄養を補います。本末転倒とは正にこの事です。ちなみにある高僧の食事を御紹介しますと、高野豆腐、蕗、湯葉、カボチャ、シイタケの煮付け、百合根、絹サヤのごま味噌和え、盛り豆腐の葛あんかけ、山芋の澄まし汁、大平(おおびら)うどん(ニンジン、油揚げ、青味)、ミカン。栄養的に完璧です。日本食がダイエットに良いと言われるのは、粗食だからという訳ではありません。先の青年僧の場合は、明らかに形骸化してしまった例で、本来、日本食には実に細やかな工夫と知恵が生きていて、とても手間がかかります。各地方で特有の料理が連綿と息づいてきました。しかし現代では、安全性の高い無農薬の野菜や米、抗生物質を与えていない鶏の卵などは、直接農家からでないと手に入りません。日本食に欠かせない大豆にしても、国産の大豆は非常に高価で、ほとんど輸入に頼っている現状です。これでは一食、数千円になりかねません。正しい日本食が庶民の手の届かぬ高級料理や妙なブランドになってしまう事は何とも嘆かわしいばかりです。