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No.08


ヤマタケが斬る

摂食障害
過食症や拒食症と呼ばれる摂食障害が女子スポーツ選手に増えています。体重が激減し、ホルモンの分泌に異常をきたし、無月経や貧血を引き起こすばかりでなく、死の危険にさらされることもある恐ろしい病気です。なかでも、常に減量と隣り合わせである陸上中長距離、機械体操、新体操などの種目に多く見られます。実際、私も幾人かの選手にこの障害を見てきました。真面目で、美人で、頭が良く、まるで非の打ち所が無い選手ばかりでした。一般的にも品行方正タイプが陥りやすいと言われています。

子供の頃から周りの期待を一身に背負い、それに応えるべく振る舞うことで、いつのまにか自主性や創造性の発達を妨げてしまうからです。他人の評価を気にするあまり、自分の価値や長所を認められず、困難や挫折に耐えられなくなってしまうのです。発病すると更に自信を失い不安は募ります。中には入院治療が必要な重症例もありました。気にせず食べれば治るのに、と簡単に考えてしまうことが早期の治療回復を困難にしているようです。

ここには社会背景も大きな影を落としています。核家族や少子化、女性の社会進出、痩身願望などの価値観の変化は、思春期の女性に自己の性への不安として重くのしかかっているのです。思い悩んでいる方は、どうか恥ずかしがらずにきちんと医師の治療を受けてください。これからの指導者には摂食障害に対する正しい知識が求められます。選手とのコミュニケーションを積極的に図り、指導に行き過ぎはないか、過度の負担になっていないか確認してください。特に理由なき不調は要注意です。
山根武司