Seria Net
No.04


日本食のすすめ

明治時代のことです。あるドイツ人の医者が人力車を雇って、日光へ旅行に行くことにしました。東京から日光まで百十キロ。車夫はこの道のりを交替なしで走り通し、十四時間半で到着しました。馬でも六回は取り換えなければならない距離です。

驚いた医者は車夫に、日頃何を食べているのかと尋ねました。答えは米とジャガイモ、大麦、粟、百合の根などというものでした。医者はあまりの粗食にまた驚き、車夫に肉中心の食事を与えて、どれくらい走れるか実験を試みました。ところが車夫は三日もすると、疲労を訴え走れなくなってしまいました。

欧米化した現代の食生活は、確かに昔より体格は大きくしましたが、体力はどうでしょうか。穀物、根菜中心のかつての日本食は、実はヒトという動物の体に合ったものであるようです。ヒトは雑食性で動物を捕らえて食べるには足が遅いし、爪も犬歯も鋭くないため、もともと動物性タンパク質だけに依存しては生きてゆけないようです。ヒトは、デンプンを分解する酵素アミラーゼを唾液にもっている数少ない動物です。草食の馬や肉食のみのライオンなどにはみられません。やはり肉や草よりも穀物、根菜などがもともと適しているということがいえるのです。

最近になって、アメリカあたりから日本食の評価が上がっていますが、日本ではいまだファースフード、ジャンクフードのとりこのまま。祖先が築き上げたすばらしい食文化を私たちがまず見直して、子供たちに伝えてゆきたいものです。
(大石)